【もりつけ解説】ダンナの誕生日。職場からケーキをもらったので、私は年に一度のごちそうを

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🎂 毎年恒例「福利厚生ケーキ」と、ささやかな誕生日スイッチ

ダンナの誕生日は、うちではあまりドラマチックなイベントではない。派手な飾りつけもなければ、サプライズパーティーもない。だけど毎年必ずやってくる“小さな儀式”がひとつだけある。ダンナの会社から支給される、あのありがたい「誕生日ケーキ」である。ホールケーキを丸ごと一台どん、と渡してくれる太っ腹な福利厚生のおかげで、うちの誕生日はだいたいケーキ代がかからない。

箱を抱えて帰ってくるダンナの姿を見ると、「あ、今年も無事に誕生日が巡ってきたんだな」と実感する。会社の制度にしれっと乗っかっているだけなのに、なんだか共犯者みたいな気分になるのもおもしろい。ケーキは毎年ほぼ同じラインナップなのだけど、苺とキウイと生クリームがぎゅっと詰まったその姿を見た瞬間、私の頭の中では「今年は何をごちそうにしようかな」というスイッチがカチッと入る。

サプライズではなく“予定調和のケーキ”だからこそ、こちらも落ち着いて作戦を立てられる。冷蔵庫の中身を眺めながら、メインをどうするか、副菜は何品並べるか、ケーキをおいしく食べきるための胃袋配分まで含めて、静かに楽しく妄想をふくらませる時間が、すでに誕生日の一部になっている。

🥩 主役はローストビーフ丼。卵黄がのった瞬間に「誕生日になった」気がする

今年のメインは、迷わずローストビーフ丼に決定した。理由はシンプルで、私もダンナもこれが大好物だからだ。ごはんの上に水菜を敷き、その上に薄く切ったローストビーフをぐるっと円を描くように並べていく。最後に真ん中へ卵黄をぽとんと落とした瞬間、ふつうの夕飯が一気に“誕生日の顔”になるから不思議だ。

盛りつけるたびに「お店ぽい……いや、気のせいか……」と自問自答しながらも、ついニヤニヤしてしまう。ダンナは照れくさそうにしながらも、テーブルにどんぶりが置かれた途端、少しだけ声のトーンが上がる。「おお、今日は本気のやつだ」と。そう言われると、「年に一度だからね」とこちらも得意げになる。

ローストビーフは前日に焼いておいて、当日は切るだけにしておく作戦。誕生日にバタバタして機嫌を損ねるのは本末転倒なので、工程はできるだけ前倒しだ。自家製のソースを上から回しかければ、あとは卵黄を崩して混ぜるだけ。ごはんにソースと肉汁と卵黄がからんで、スプーンが止まらない。ダンナが黙々と食べている時は、だいたい「おいしい」のサインなので、私はそれを横目で確認しながら、心の中でガッツポーズを決めている。

🥗 サラダと小鉢で“誕生日らしい”食卓に整える

メインが決まったら、次はまわりを固めるおかずたち。誕生日だからといって特別な素材を買い足したわけではないけれど、いつもより少しだけ手数を増やして、せっかくのローストビーフ丼がさびしく見えないように整えていく。

サラダは、レタスと水菜に赤玉ねぎのマリネ、角切りポテトサラダをのせたボリュームタイプ。シャキシャキとねっとりを同時に味わえるようにしておくと、それだけで「ちゃんと考えた感」が出てくれるから助かる。小鉢には、れんこんと南瓜とねぎの焼き浸しを少量ずつ。きゅうりとトマトのさっぱり小鉢も添えて、彩りのチームワークでがんばってもらう。端っこには冷奴の上にキムチをちょこんとのせて、ちょっとだけ居酒屋の雰囲気もプラス。

こうして並べてみると、どれも家にあるもので作った地味な料理なのに、ローストビーフ丼という主役が真ん中に座るだけで“誕生日ランチのメンバー”っぽく見えてくるから不思議だ。食卓を写真に撮ってみると、“がんばりすぎてはいないけれど、ちゃんと祝う気はある家庭”という雰囲気がにじみ出ていて、我ながらちょうどいい落としどころだなと思う。

🍰 福利厚生ケーキにひと手間プラスして、ささやかな特別感を

そして毎年恒例の主役その2、会社からもらったホールケーキの登場である。苺とキウイがたっぷり乗って、生クリームがぐるぐる絞られている姿は、いつ見てもテンションが上がる。すでに完成された状態でやってくるので、こちらがやることは基本的に「切り分けるだけ」なのだけれど、今年はそこにちょっとだけ手を加えてみた。

りんごを薄切りにしてバターでじっくり炒め、最後にシナモンを少し振る。甘酸っぱくてあたたかいりんごのソテーをケーキの横に添えるだけで、福利厚生ケーキが“うちのデザートプレート”に変身する。お店のような立派なアレンジではないけれど、「せっかく年に一度なんだから、ひと手間くらいはね」という気持ちの表れだ。

ダンナはいつも通り多くを語らないけれど、一口食べてから「これ、りんごいいな」と一言だけコメントしてくれた。その一言が聞きたくて、私はまた来年もきっとりんごを炒めるのだと思う。

🕊️ 派手じゃなくていい、でも「来年も同じでいいね」と言える誕生日がうれしい

そんなこんなで、今年の誕生日も大きなハプニングもなく静かに終了した。プレゼントは特別に用意していないし、豪華な外食に出かけたわけでもない。でも、ローストビーフ丼を前にしたダンナのちょっとだけうれしそうな顔と、ケーキを前にしてふたりで「今年も無事に歳を取ったね」と笑い合えたことが、いちばんのごちそうだった気がする。

誕生日だからといって、毎年新しいことをしなければいけないわけじゃない。うちの場合は、職場からのケーキと、家で作るごちそうのセットを「よし、これで今年も完了」と確認する行事になっている。それでも十分に幸せだし、むしろ同じパターンが続くこと自体がありがたい。

来年もまた、ダンナがケーキの箱をぶら下げて帰ってきて、私は冷蔵庫の前で腕を組みながらメニューを考えるのだろう。その未来がなんとなく想像できるからこそ、今年のローストビーフ丼とケーキは、少しだけ特別な味がした。


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